「これが紙?!」と思わず二度見してしまうような奇想天外なアイデアが詰まった紙モノ作品は、どれも手から生まれるあたたかさを感じられるものばかり。「とにかく紙が大好きなんです」と話す作家・紙のかんづめさんに、作品に込められた想いや、こだわりについてうかがいました。
思いがけない方向転換
作家活動をはじめたきっかけをおしえてください。
紙のかんづめ 遡ってみれば、リーマンショックがきっかけなんです(笑)。OLとして、のほほんと働いていたときにリーマンショックが起こって、まわりは次々とリストラをされていって…。「これは手に職を就けなければ!」と、働きながらデザインの専門学校に通いはじめました。そこで、イラストレーターなどのソフトを使ってパソコンでデザインをすることを学びました。
やっぱり、紙が好き!
紙のかんづめ 卒業後は、企業のWebデザイン課に採用されました。「まずは、紙のデザインで研修を積んでから」という会社の方針でwebではなく紙媒体の部署に配属されたところ、それがもうたのしくてたのしくて。「私、紙媒体のデザインが好きなんだ」と、気づかされましたね。
その後、作家活動をすぐにはじめられたんですか?
紙のかんづめ 書店で紙モノ雑貨をハンドメイドされている人がいるということを知り、「私も!」と思い立ったのですが、自分が作家活動をするなんて考えたこともなかったし、何から手をつけたらいいのかわらかなくて…。ハンドメイド作家さんが多く出店しているイベントに足を運んでみたんです。そこで出会った紙モノ作家さんに「どうやって作家になったんですか?」「何からはじめたら良いですか?」と、根掘り葉掘りうかがって(笑)。minneの存在もその方に聞いて知りました。不安が解消されて「よし、私も何かつくってみよう!」と、ようやく気持ちが前を向きはじめました。
「紙のかんづめ」の誕生ですね!
紙のかんづめ そうです!作家名も相当悩みました。本当は英字のかっこいい名前をつけようかと模索したんですが、なかなかピンとくるものがなく頭を抱えていたときに、目の前にあった本のタイトルを見て「これだ〜!」と、ヒントにさせていただきました。紙の作品がたくさん溢れている感じがするし、何より“紙が大好き”だということをアピールしたかったので、ぴったりだな〜と!
デビュー作となった「ティーバッグ型のメッセージツール」ですが、どこからヒント得て制作されたんですか?
紙のかんづめ カフェをはじめたいと思っていた時期があって、毎日紅茶ばっかり飲んでいたんですね。そのときに、もっと持ち手の紙の部分を工夫したり、季節ごとにデザインを変えたりしたらたのしいのになぁ…と考えていたことを、かたちにしてみました。もう当時はつくりたいものがありすぎて、アイデアばかりが溢れ出て全然手が追いつかない状態でしたね。
そのときすでにminneには登録されていたんですよね?
紙のかんづめ そうなんです。本当にドキドキしながら登録しました。「自分がネット販売をやってる!」ということがうれしくてうれしくて、何度も自分のページを見返していましたね。1週間もしないうちに「ティーバッグ型のメッセージツール」が売れて感動したことを、いまでも覚えています。一生懸命つくってはいたんですが、デビュー作だったので後から見ると至らない点が多くて…。約1年後に使いやすく改良して、その“最初のお客様”に「ぜひこちらも使ってください!」と、改良版も郵送させていただきました。そのくらい「初めてのお客様」というのは、自分にとって特別なものでした。
手を動かしてカタチにしていく
作品のデザインはいつもどのように考えているんですか?
紙のかんづめ 枠にとらわれたくないという思いから、「紙」ということ以外は特にコンセプトもなく制作しているのですが、逆にいえば自由。常に頭の中で何でも「紙」に変換するクセがついていて、日常的に目に入ったものでも「あれを紙でつくったらどうなるんだろう?」なんて考えたりしています。例えば落ち葉のカードは、息子と散歩しているときに落ち葉のじゅうたんを見て思いついたものです。息子が生まれてから視点が変わり新たな発見が増えたので、最近の作品は日常の中から生まれることも多いです。
納得いくまで何度も
_「minneハンドメイド大賞2017」の最終ノミネート作品・「想い出のサンドイッチ」もすてきです。
紙のかんづめ 息子のおままごと道具を見て思いつきました。だから作品ページの写真もおままごと道具といっしょに撮影しているんです。アイデアはすぐに思いついたものの、紙でできたレタスとハムとチーズを少しずつ形を変化させながら重ねていく作業が意外と難しくて。完成するまで何度も試行錯誤を繰り返しました。
実際に、販売するまでに至らなかった作品もあるんですか?
紙のかんづめ たくさんあります!作品のアイデアは日常から得て、就寝前に頭の中で整理することが多いんですが、だいたい寝たら忘れているんですよ(笑)。でも、中には鮮明に覚えているものもあって。それはもう朝目覚めたらつくりたくて仕方なくって、とにかく机にむかって紙を切り貼りして手を動かしながらブラッシュアップしていきます。ボツになる作品も多いのですが、3年間あたため続けている作品もあります。何度つくってみても、どこかうまくいかないんですが、続けていくつもりです。
お好きな紙モノ作家さんはいますか?
紙のかんづめ それはもちろん!でも、実はあまり見ないようにしています。知らず知らずのうちに自分の作品にも影響されてしまうような気がして。「どこかで見たことあるな」という作品は、できればつくりたくないんです。だから参考になりそうな本を見るときも、あえて「自分だったらここはこうする」と常に考えながら見るようにしています。
minneを活用していて印象的なエピソードはありますか?
紙のかんづめ 目次が書き込めるようになった「レシピノート」というのを販売しているのですが、「娘が嫁ぐことになったから、“母のレシピ”を持たせてあげたい」ということで購入された方がいらっしゃって。そんな風に役立つことになるとは思わなかったので、本当にうれしかったですね。
「レシピノート」のように、ノートはノートでもひと工夫されたものが多く販売されていますね。
紙のかんづめ どうせつくるなら面白いものを!と思っています。私はイラストレーターではなく、あくまで紙モノ作家なので“ひと工夫”がプラスされたものを販売したいと決めているんです。だからノートひとつとっても、形を台形にして富士山やプリンに見立てたりしたものを制作しています。
最後に、今後の活動についておしえてください。
紙のかんづめ 自分でいうのもなんですが、少し紙の限界を感じているところなんです。いま、100円均一でもびっくりするくらいかわいくて便利な紙モノが販売されていて…軽く敗北感を味わっています。だから、これからはハンドメイドしかできないこと、そして「紙でこんなことができるの?」「え!これって紙だったんだ」っていう驚きも与えられるような作品を制作していきたいと思っています。