++ 綺羅雪の里 ++

++ 綺羅雪の里 ++

こんにちは。 店主の弥光で御座います。 長すぎる夏もようやく終わり ついに冬の足音が聞こえてきました。 今日は年中雪降る里について お話をしたいと思います。 雪の溶けない山が連なる国。 山と山の間に集落がいくつかあり、 寒さの中で力強く暮らしています。 文明から遠く離れたこの国ですが 布生地の産地として名高く、 この集落で作られる布は 手芸を嗜むものならば いつかは使ってみたい夢の素材として 古くから作家たちに愛されています。 特にこの地方の景色を模した 雪の結晶の柄が定番品です。 集落ごとに仕事が分かれており 一番山に近い集落では材料を採取し その手前の集落では糸を縒り またその手前の集落では布を織り …と言った具合で 都会に近づくにつれて 品物が出来上がっていくのです。 面白い話ですが、真実かどうかは 定かではありません。 というのも、 街に一番近い集落には販売所があり この山間で作られた布が売られていますが それより奥の集落への道は 氷の門で固く閉ざされ 集落の内部の者以外が 訪れることは出来ないからです。 ある日のこと、たまたま氷の門が開き 奥の集落の者が数人、 布の束を持って販売所にやって来ました。 出来上がったものを納めるのでしょう。 皆、大判の白いマント羽織り 頭から被るようにショールを巻いて せっせと運び入れています。 不思議な言葉で話しており それは方言のようなものでもなく また、言語の違いでもない どこで聞いたこともない言葉でした。 氷の門が閉まると、その隙間から ひらりと一枚白い羽が落ちてきました。 その羽のしっとりと滑らかな手触りは、 販売所で売られている布の心地と 本当によく似ていたそうです。 それでは、又。

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石と硝子を紐で編む店

弥光商店
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