かかりつけ時計職人

かかりつけ時計職人

公開日: 2024/04/20更新日: 2024/06/22
「わたしたち若い世代は、そもそもモノが壊れたときに、 〝直して使う〟という発想はない。」 これは弊店と取り引きのある、 さる20代のクリエイターさん(女性)がおっしゃった言葉です。 猫も杓子もSDGsを唱える時代ーー。 「サステナブルな社会」が声高に叫ばれるなか、 その実現にはまだまだ時間がかかると感じたひと幕でした。 戦前戦中のストイックな生活から解き放たれた開放感からか、 わたしたち日本人は経済の高度成長をはたすなかで、 いつしかモノを使い捨てる余裕こそが、 豊かさの証左かのように勘ちがいしてしまった面があります。 いざ「サステナブル」な日常へ舞い戻ろうとしても、 使い捨て文化に慣れきってしまったわたしたちには、 持続可能性を模索する知識や経験さえ、 もうどこかへ置いてきてしまったのだと痛感します。 先日、別の若い男性が、こう尋ねてこられました。 「このぜんまい時計は、電池式ですか、充電式ですか?」 現に、機械時計を修理できる職人さんも全国的に激減しています。 ご高齢による引退、もしくは鬼籍に入られるなどして、 技術者不足は年を追うごとに深刻の度を増しています。 機械時計こそは、まさに高度に「サステナブル」な精密機器です。 故障することもありますが、「直して使う」価値のある工芸品です。 またそのようにつくられており、 そのためにはプロの職人たちの技術が必要不可欠です。 残念ながら国産メーカー各社は古いモデルの修理を受けつけてくれません。 ホームセンターやショッピングモールの時計コーナーでも、 技術・知識・経験の不足から、往年の機械時計には歯がたちません。 そこで……。 ぜひ、お近くで腕の確かな「かかりつけ時計職人」を見つけてください。 いまなら、まだ見つかるはずです。 さしあたり、 時計ライフにおけるSDGs(サステナブル社会を実現するために掲げられた目標)とは、 まず信頼のおける時計職人を見つけること。 ーーこれに尽きるのではないでしょうか。 かかりつけ医だけではありません。 かかりつけ時計職人も、 「サスティナブルな」人生を送るうえでは大事な存在です。

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1990年創業。古時計・その他ヴィンテージ製品のレストアと販売をおこなっています。

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