「わたしたち若い世代は、そもそもモノが壊れたときに、
〝直して使う〟という発想はない。」
これは弊店と取り引きのある、
さる20代のクリエイターさん(女性)がおっしゃった言葉です。
猫も杓子もSDGsを唱える時代ーー。
「サステナブルな社会」が声高に叫ばれるなか、
その実現にはまだまだ時間がかかると感じたひと幕でした。
戦前戦中のストイックな生活から解き放たれた開放感からか、
わたしたち日本人は経済の高度成長をはたすなかで、
いつしかモノを使い捨てる余裕こそが、
豊かさの証左かのように勘ちがいしてしまった面があります。
いざ「サステナブル」な日常へ舞い戻ろうとしても、
使い捨て文化に慣れきってしまったわたしたちには、
持続可能性を模索する知識や経験さえ、
もうどこかへ置いてきてしまったのだと痛感します。
先日、別の若い男性が、こう尋ねてこられました。
「このぜんまい時計は、電池式ですか、充電式ですか?」
現に、機械時計を修理できる職人さんも全国的に激減しています。
ご高齢による引退、もしくは鬼籍に入られるなどして、
技術者不足は年を追うごとに深刻の度を増しています。
機械時計こそは、まさに高度に「サステナブル」な精密機器です。
故障することもありますが、「直して使う」価値のある工芸品です。
またそのようにつくられており、
そのためにはプロの職人たちの技術が必要不可欠です。
残念ながら国産メーカー各社は古いモデルの修理を受けつけてくれません。
ホームセンターやショッピングモールの時計コーナーでも、
技術・知識・経験の不足から、往年の機械時計には歯がたちません。
そこで……。
ぜひ、お近くで腕の確かな「かかりつけ時計職人」を見つけてください。
いまなら、まだ見つかるはずです。
さしあたり、
時計ライフにおけるSDGs(サステナブル社会を実現するために掲げられた目標)とは、
まず信頼のおける時計職人を見つけること。
ーーこれに尽きるのではないでしょうか。
かかりつけ医だけではありません。
かかりつけ時計職人も、
「サスティナブルな」人生を送るうえでは大事な存在です。