「ほれほれ、今日はおまえに魚をやろう。
さかなだぞ?好きではないのか?」
…馴れ馴れしいこの女は私の主人である
猫に対していっぬと呼んでくる素敵な感性をお持ちだ。
抗いようのない匂いが鼻の中を支配する…
そこいらの野良なら後先考えず飛びつくところだが
実のところ前足を浮かすので精一杯なのだ…
…私は魚が怖いのである
頭に飛びつかれた時のあの顔が忘れられない…
目が合うと駄目なのだ…
主人はそのことに気づいているのだろう。
憎たらしいことにいつも目が三日月のように笑っているのだ。
また今日もくだらない拷問に私は耐える。
可愛くしていれば、可愛くさえしていれば、
夕飯には顔の付いていないほぐされた身がもらえるのだ。
残り香の漂う肉球をぺろぺろと舐めながら今日も思う…
見た目も口調も風変わりなご主人だが、
そこそこ幸せな毎日なのだ𖥧
ᗢᗢᗢ
「さかなこわい」
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