【豆本】銀河鉄道の夜-宮沢賢治
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昔々、まだ私が美大生だった頃のお話です。
御多分に漏れず?ろくに勉強もしない大学生活でした。
大学が都会にあったこともあり、毎夜毎夜、新宿や六本木のディスコで踊り遊んでおりました。
そんな私でしたが、美術大学の実習の授業は色々と興味深いものでしたので、それなりにやっておりました。
その実習授業に「店舗計画」という課題があり、店舗のインテリアデザインの模型製作と、その店舗で使用する包装紙(紙袋など)もデザインするという課題でした。
何屋さんにしよう?どんな店内デザインにしよう?どんな包装紙にしよう?とワクワクしました。
やっぱり一番好きなものを売っているお店にしよう!と私は「本屋」さんにしました。
模型は実際の店舗の1/12の縮尺で、ビルに入っているテナントという想定でしたので、模型はまるでドールハウスのようでした。
今だったら、もっと凝った作りの模型にしたかもしれませんが、当時は凝ったものを作るような製作スキルもなかったので、図画工作のレベルでした。
昔から本が好きで、宮沢賢治のファンでしたので、「銀河鉄道の夜」のイメージで、「銀河ステーション」という名前の本屋にしました。
店舗の中に機関車の車両を入れ、その車両が書棚になっているというもので、さしずめ移動図書館モドキ(移動しない想定なので)って感じでしょうか。
今なら、その車両に並べる本のミニチュアも中身の読める豆本にしたでしょうが、当時はそんなめんどくさい?ことをしようなどとは夢にも思わなかったので(笑)木片に色とりどりの無地の表紙を貼り付けただけの簡単な手抜きものでした。
1か月ほどの課題製作期間でしたが、何とか完成し提出しました。
授業の中で、課題の評価も行われたのですが、私の「銀河ステーション本屋」の評価は「A」でした!
「A」「A'」「B」「B’」「C(再提出)」の順なので、「A」は最高評価なのです!
そのときの教授の評価コメントは一生忘れられません、その後の私のものづくりの基本方針となるものでした。
「デザイン考案や細部のディティールなど未熟なところは多々あれど、丁寧に作られている。」というものでした。
私はそのときにはっきりと自覚しました。
「ものづくりというものは、丁寧に作業することこそが基本なのだ、そうすればたとえ未熟な私でも、高評価が得られるのだ。」と。
遊び歩いていることの多かった大学生活でしたが、この課題の授業だけでも大学に通った甲斐があったと思いました。
話しはさらにさかのぼりますが、小学1年のときに国語の宿題がありました。
国語の教科書からの抜粋の昔話をモチーフにしたプリントで、上段に物語のぬりえ、下段に文字を書く、というものでした。
本来は文字の練習のための宿題なのでしょうが、私はぬりえに興味津々でした。
けれど、いざ塗りはじめてみるとすぐに飽きてしまい、めんどくさくなって適当にぐちゃぐちゃに塗りなぐって、文字も適当に書きなぐって提出していました。
その宿題は上手に出来た生徒は、名誉を伴い誇らしげに貼り出されることになっており、私は結局一度もその誉れを享受することはできませんでした。
貼りだされた宿題をよく見ると、それらはどれも丁寧に作業されたものばかりでした。
今思えば、小学一年生ぼうずのくせに、あんな丁寧な作業ができる人がいるなんてと、驚愕に値しますが、当時はその丁寧さこそが評価を受けられる要因だとは、まったくわかっていませんでした。
大学生になってはじめて、丁寧さこそがものづくりの根幹であるということに、ようやく気がついた私でした。
以来、手作業の何かしらのものづくりをするときには、一に「丁寧」二に「丁寧」三も四も五以上も全部「丁寧」を心がけています。