++水を抱く花++

++水を抱く花++

こんにちは。店主の弥光です。 大変暑い日々が続いております。 お身体をお大事にお過ごしください。 この酷暑ですので、せめて今だけでも 涼しげなお話を致しましょう。 ある国の山間に「水珠草」という 水草の生息地があります。 その季節のみ生える性質があるので 大変貴重で手に入れにくいものですが 様々な病に効くとされており 古くから多くの人々が採取に訪れたり 他国へも渡った記録が残されています。 見た目は読んで字の如くで 手のひら大の水晶球を思い浮かべれば 雰囲気が伝わるかと思いますが、 実際は青い水草が水面を這って、 包むように丸く水を抱いています。 水珠草の生息地は川の中。 強い流れに攫われることなく 川底の石たちと混ざって沈んでいます。 薬にする時は水草を剥がしますと 自然の通りにパシャリと水が落ちるので その水を瓶に詰めて薬とします。 水珠草の生える頃には川の周りの あらゆるものが美しい青に染まります。 沈んでいる石も、川沿いの岩も 生息している鳥の羽や樹木までも。 付近に暮らす人々はこの時期 白い布や糸、硝子などを 川に沿って、ずらりと干します。 するとこちらもやはり青に染まるので 織物やランプを作るなど色々な生業に使い 水珠草の薬を売ることも含め 生活の糧にして暮らしています。 この川を山上から見ると 青い龍の姿に見えることから 人々は、青染めの季節が来ると 「山に龍が戻った」と口々に喜び また再び龍がやってくるように 盛大に捧げ物を用意してお祭りをします。 上流・中流・下流に分かれ それぞれ水質も異なるためか 薬の効能や工芸品の色も 少しずつ異なっているようです。 美しき青に染まる山間、 是非行ってみたいですね。 それでは又。

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石と硝子を紐で編む店

弥光商店
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