チーズの穴と菌のはなし。その2

チーズの穴と菌のはなし。その2

前回に続き、チーズに穴を開ける菌のおはなし です。 今日の主役は「酪酸菌」です。 前回、トウモロコシの漬物、サイレージの時に サラッと飛ばしたヤツです。 この酪酸菌もチーズに穴を開けます。 プロピオン酸菌の開けたようなクリックリのまん丸 ではありません。 横に亀裂の入ったような穴です。 なぜかプロピオン酸菌が開けたまん丸の穴の近く に開くことが多いです。 仲良しですね。 実はこの酪酸菌、チーズに異常発酵をおこす嫌われ 物なのです。 ガスを出す力が強すぎて、チーズが膨らんできます。 また、香りも独特です。 もわっとした、不快な匂いになります。 この酪酸菌もプロピオン酸菌と同様、牛の餌の トウモロコシの漬物からやってきます。 ではトウモロコシを発酵させる段階では、いい 仕事をするのかといえば、やはり違います。 酪酸菌が多い餌は、不快な匂いなので、牛も嫌がり ます。 牛は案外グルメなので、気に入らない餌は食べません。 きれいに残してあります。 手間ひまかけてゴハンを作って、食べてもらえなかった 時の悲しさといったら・・・。 では、酪酸菌がゼロだといいのかと言えば、そうでも なさそうです。 人間の腸内にも善玉菌と悪玉菌の両方がいて、善玉菌が 優勢な状態がベストだといいます。 悪玉菌がいないと善玉菌も平和ボケして、元気がなくなる とかで・・・。 人間の腸内細菌の話になったので、じゃあ酪酸菌入りの チーズを食べたらどうなるの? 臭くなる?って思いませんか? じつは酪酸菌は牛の餌やチーズにいるときは異常発酵を おこす悪玉菌ですが、牛のお腹の中や人間の腸内では、 善玉菌なのです。 しかも、脂肪を吸収しにくくする最強のやせ菌なのです! ここまで、マニアックな話にお付き合いいただき、ありがとう ございます! 難しい菌の名前は覚えなくてもいいです。 酪酸菌はサプリメントとして売られている位、人間には嬉しい 存在なのです‼ 特に日本人はぬか漬けとして、酪酸菌を食べ続けてきたので、 日本人は酪酸菌と相性の良い民族なのです。 通常、チーズ作りでは酪酸菌はやっかいな目の敵として 扱われます。 しかし、私としてはこの酪酸菌がかわいくて仕方ないのです。 酪酸菌を愛するチーズ職人は世界広しといえど、私だけでは ないかと思ったりします。 輸入チーズでは酪酸菌が増えすぎないよう、添加物を入れている 場合もあります。 しかし酪酸菌を殺す添加物をチーズと一緒に食べてしまうと お腹の中の酪酸菌も殺してしまいます。 太る体質になります。嫌です! 「お前は悪くない、住む環境がお前に合っていなかったのだ。 今はおとなしく眠っておいで。 いずれ美味しいチーズになって、だれかのお腹の中に届いたら、 そこがお前の住み家だよ。 目を覚まして、存分にちからを発揮するんだよ。」 そんな風に語り掛けながら、日々チーズと向き合っています。 キチンと温度管理をして製造すると大人しくしてくれるいい奴です。 時々、小さく横長の亀裂が入っても、チーズが膨らんだり、 異常な匂いを出すまでには至りません。 皆さまも「はじめのチーズ」に亀裂の入ったような穴を見かけた ら、不格好だと思わずに、「やった!最強のやせ菌、ゲット‼」 位のテンションで喜んでいただけたら、幸いです。 https://minne.com/items/22414099

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